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 結膜の細胞膜上で抗原とIgE抗体が反応してヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質を細胞外に放出して炎症を起こした状態のことで、眼掻痒感、流涙、充血、異物感、粘液性眼脂などの自覚症状があり、結膜充血、結膜浮腫、結膜濾胞などの所見が認められます。
 通年性アレルギー性結膜炎(SAC)と季節性アレルギー性結膜炎(PAC)に分けられ、通年性はダニ・カビ・動物の毛・皮屑などの常在抗原によるもの、季節性はスギ・ヒノキ・カモガヤ・ブタクサなどの花粉や高温多湿の時期に増殖するダニ・真菌などによるものです。
 アトピー性皮膚炎に合併するアトピー性角結膜炎(AKC)は通年性で慢性的に眼掻痒感、眼脂、乳頭増殖、角膜病変が認められ、コンタクトレンズ(以下CL)の装用は勧めません。
 結膜に増殖性病変を有する重症アレルギー疾患の春季カタル(VKC)は上眼瞼結膜の巨大乳頭、輪部増殖(トランタス斑)角膜病変(落屑様点状表層角膜炎、シールド潰瘍、角膜プラーク)などのため、CLの装用は禁忌といってよいでしょう。
 同じく上眼瞼結膜に乳頭増殖病変を有する巨大乳頭結膜炎(GPC)は、コンタクトレンズや義眼、手術用縫合糸などの機械的刺激によって発症するものです。コンタクトレンズ障害としてよくみられるものです。乳頭は春季カタルのものより小さく、眼掻痒感、白色粘液性眼脂、CLのくもり、CLの上方へのずれなどの自覚症状があります。CL装用を中止して治療します。治癒後は発症原因時と同様のCLや装用方法を繰り返すと必ず再発します。素材は種類の変更や、使い方の改善が必要です。
 CLの装用はアレルギー性結膜炎を悪化させる原因になります。CLを装用していると抗原物質が結膜嚢内に対流する時間が延長しアレルギー反応を強くすること、CLを繰り返し使用することでCLへの抗原付着量が増えること、ケース内に繁殖した細菌やカビ、多目的溶剤の成分などがCLに付着して結膜を刺激すること、CLに擦られることで結膜上皮を障害して抗原が結膜下に侵入しやすくなることなどがアレルギー悪化の要因と考えられます。


本症例におけるレンズ選択のポイント

 CL装用はアレルギー性結膜炎を誘発、悪化させる要因になります。処方前に上眼瞼結膜を翻転して結膜濾胞がある場合はアレルギー疾患の既往がないか再度、問診します。自覚症状がなくてもアレルギー性結膜炎を悪化させないようなCLの選択を心がけます。
 理想的なCLは空気中に浮遊する抗原がCLの表面に付着しないものですが、残念ながら付着率ゼロは不可能です。そこで、抗原が付着しにくい、もしくは付着してもとれやすいレンズの素材や種類を選択します。
 第一選択は毎日新しくする一日使い捨てSCL(DSCL)です。CL装用中は結膜嚢に入った抗原を人工涙液を点眼して流します。イオン性素材よりも非イオン性、乾きにくい素材、シリコーンハイドロゲル(SHCL)素材、なるべく柔らかい素材などを勧めます。
 頻回交換ソフトコンタクトレンズ(FRSCL)やハードコンタクトレンズ(RGPCL)は、中等度以上のアレルギー症状がある時は装用を中止します。従来型SCL(CSCL)はアレルギー疾患がなくてもすべての症例に勧めません。
 軽度のアレルギー性結膜炎(PAC・SAC)の場合は症状が悪化する場合は中止するように注意した上で、装用時間を短くして頻回交換SCL(FRSCL)やハードコンタクトレンズ(RGPCL)の装用も許可しています。ただし、頻回交換SCL(FRSCL)の使用日数が継続するとともに症状が強くなる場合は、2週間等の使用期限よりも早めに交換することを勧めています。消毒ケア用品は過酸化水素製剤を使用し、すすぎ洗いをよりしっかりするように指導します。多目的溶剤(MPS)のほうがアレルギー反応を誘発しやすいので筆者は勧めていません。ハードコンタクトレンズ(RGPCL)はCLチェッカー等で汚れの付着部分を検査して洗い方の指導をしっかり行います。古くなると汚れが蓄積してきますので、1年に1回リニューアルするシステム販売も登場しています。
 アレルギー症状がある場合はCL装用を中止するのが最も安全ですが、日常生活でCL装用している方は、必要性があって装用しています。可能な場合は安全にCL装用ができるような提案をしています。


処方のポイント 1.問診

 CLを処方する場合は、必ずアレルギー疾患(アレルギー性結膜炎・アレルギー性鼻炎・アレルギー性皮膚炎・アトピー性皮膚炎・花粉症・喘息)の既往の有無を確認します。またアレルギーの発症する時期が通年性か季節性か、季節性であればいつ頃か、抗体検査の履歴があれば何に対する抗体があるのかについて聴取します。さらに他科で処方薬がある場合は薬剤の確認をします。
 また、これまでにCLを装用したことがある場合は、CLの種類や名前、規格、装用方法(装用期間・装用時間など)、ケア用品の名前とケア方法(こすり洗い・すすぎ洗い・ケースの交換や乾燥の有無)、過去のCL障害の経験の有無と既往があればその経過について問診します。
 CLを装用している時には角膜を覆っているために眼刺激症状の自覚が少ないことがあります。花粉症は鼻炎だけと思っていて、眼科での問診の意義を理解していない症例は珍しくありません。耳鼻科や内科で点眼薬を処方されていたり、市販点眼薬を購入したりして使用していても、眼科で告知しないことがあります。患者自らがこちらの知りたいことを告知するとは少ないのでもれなく聴取することです。


処方のポイント 2.度数決定

 アレルギー性結膜炎が発症している時はレンズが汚れやすいのでくもり、見えにくさを自覚していることがあります。この場合、CL装用の上から矯正すると、近視ではマイナスレンズを追加すると見えやすくなることがあり、そのまま度数を強く処方してしまうと過矯正になってしまいます。必ず、CLをはずして正しい屈折検査をするとともに、CLの汚れや前眼部、特に上眼瞼結膜の診察が大切です。


処方のポイント 3.細隙灯顕微鏡検査での注意

1)上眼瞼結膜
 アレルギー性結膜炎の自覚症状がなくても上眼瞼に結膜濾胞がある場合は、CL装用がアレルギーを悪化させる可能性がありますので、CLおよびケア用品の選択に注意を要します。また、CL使用しているうちに徐々に結膜濾胞が出現していることもあります。この場合は、アレルギー性結膜炎を惹起している使用中のCL、ケア方法、ケア用品の見直しが必要です。

2)輪部角結膜
 アレルギー症状がありながらCL装用を継続していると輪部の結膜充血や角結膜の腫脹がみられます。一方、CL装用中はCLによって輪部各結膜が圧迫されているので輪部充血が軽度に見えることがあります。結膜のアレルギー所見が強いときはCLをはずして診る必要があります。


処方のポイント 4.フィッティングの判定

 アレルギー性結膜炎発症時には涙液が減少していることもありCLの動きが悪くなり固着してしまうことがあります。このような場合はアレルギー性結膜炎が治癒もしくは軽快するまでCL処方は延期します。
 巨大乳頭結膜炎(GPC)を発症していると上眼瞼結膜にできた増殖した乳頭が瞬目時にCLをこすりあげるために、CLが上方へずれることが多々あります。必ず、CL処方時には眼瞼結膜を翻転して診察することが大切です。CLがずれる、はずれやすい、みえにくいという症状がありますが、これを異常と自覚していないこともあります。CLの装用を中止し治癒してから新たにCLを処方します。新しいCLは、一日使い捨てCL(DSCL)や、巨大乳頭結膜炎(GPC)発症時に装用していたCLよりも柔らかな素材に、ケア用品を過酸化水素に変更し、こすり洗いをしっかり指導します。


処方のポイント 5.患者指導のポイント

1)セルフケア
 アレルギー疾患の既往がある場合は、眼にアレルギー症状が発症した場合に早期に自覚できるように症状について説明しておきます。アレルギーは眼掻痒感だけだと思っているのが一般の人ですが、眼掻痒感出現前には白色粘性眼脂、眼脂で急にかすむ、軽度の充血が継続する、黒目の周りが充血する、目が乾く、CLがくもる、CLがずれやすい・汚れやすいなどの症状が先行しています。これらに早く気付いて眼科受診をするように指導します。
 さらに、我慢できない眼掻痒感、結膜充血が強い、黒目の周りが充血している、眼脂が多い場合には必ずCLの装用を中止して眼科受診させます。強いアレルギー症状があるにもかかわらずCLを装用し続ければ、重症化するためにCL装用のドクターストップの期間が長引くことになることを説明しておきましょう。
 アレルギーの原因物質が飛散している環境ではマスクとゴーグルもしくは眼鏡を使用して抗原になるべく接触しないことが大切です。スギ花粉症であれば洗濯物や布団を室外に乾さないこと、スギ花粉飛散時刻には窓を開けないこと、帰宅時には洋服等に付着したスギ花粉を掃うこと、人工涙液点眼にて抗原を洗い流すことを勧めます。洗眼用の商品が市販されていますが、アレルギー性結膜炎では防腐剤無添加の人工涙液を点眼してください。
 アレルギー性結膜炎は抗原に出会ったときに症状が発症するものです。普段から、抗アレルギー点眼薬や人工涙液の使用方法、季節によってCLの変更やCLの使用方法の変更、眼鏡の併用などを指導して、患者自身が自覚症状に敏感になって適切なセルフケアができるように教育することが大切です。

2)眼鏡
 CL装用を中止して眼鏡に切り替えるには、適切な眼鏡を持っていることが必要です。CL処方時にはいつでも所持眼鏡が適切であるかの確認し、眼鏡を持っていない、あるいは持っていてもあっていない場合は、眼鏡の必要性を説いて眼鏡処方をしておきます。

3)CLケア
 ケア用品は普段から多目的溶剤ではなく過酸化水素製剤を勧めます。こすり洗いやすすぎ洗いが適切にされていないとCLの汚れがアレルギーの原因になることもあります。
 ケースが定期的に交換されていることも重要です。

4)使用期間
 CLが汚れるほどアレルギー症状は顕著になります。季節性アレルギー性結膜炎(PAC)では、アレルギーシーズンは1日使い捨てCL(DSCL)に切り替えることが望ましいです。また、頻回交換SCL(FRSCL)の場合は、アレルギーシーズンは使用期限よりも短い期間で交換することを勧めています。

5)治療
 スギ花粉症、季節性アレルギー性結膜炎(PAC)は、スギ花粉の飛散開始予想の2週間ほど前から抗アレルギー点眼薬や内服薬を開始すると症状を軽くすることができますので、季節前の受診を勧めています。(抗アレルギー薬内服はアレルギー性結膜炎にも効果がありますが、保険適応がありません。)
 抗アレルギー点眼薬はなるべくCLをはずしている時(朝、帰宅時CLをはずすように指示しはずした時、寝る前)に点眼させますが、CL装用中にも症状が出現する場合は、CLの上からでも1~2回までは防腐剤の少ないものを選択して点眼を許可しています。抗アレルギー剤のみでは症状が軽減しない場合はステロイド点眼薬を追加しますが、ステロイド点眼薬は決してCLの上から点眼しないこと、ステロイド点眼薬を必要とするほどアレルギー症状が強いときはCLを中止するように指示します。
 防腐剤無添加の人工涙液の点眼は抗原を洗い流すために有効です。


さくら眼科 院長 松久充子


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